2. 複式簿記について
複式簿記とは
簡単な帳簿の例として、よく家計簿が挙げられます。
家計簿 |
1/24 |
食費(スーパー) |
|
-¥4,657 |
|
光熱費(水道代) |
-¥3,700 |
1/25 |
給料 |
+¥210,000 |
|
外食 |
-¥6,100 |
・・・ |
・・・ |
・・・ |
|
残高 |
|
-¥24,107 |
家計簿は残念ながら、
複式簿記ではなく、単式簿記の仲間となります。
単式簿記では、現在の資金の残高を知ることはできても、
そのお金が現金なのか、預金口座にあるのか、
はたまた、稼いだお金なのか、借金なのか、
買ったものは手元にあるのか無いのか、すぐ使っちゃうものなのか、
整理するのは非常に困難です。
複式簿記を用いることによって、
これらの問題をすぐに解決することができます。
複式簿記の基本
1月24日に、ギターの弦を現金¥5,000で購入したとします。
その場合の、複式簿記での記入は以下のとおりです。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/24 |
消耗品費 |
¥5,000 |
現金 |
¥5,000 |
この例について、詳しく見ていきましょう。
複式簿記では、借方と貸方の二つ金額を記入する欄があり、
かならず、同じ金額を記入することが大原則です。
どちら側に、何を書けばよいかということに関しては、
「現金が増える場合は、現金を借方(左側)に、その勘定科目を貸方(右側)に」
「現金が減る場合は、勘定科目を借方(左側)に、現金を貸方(右側)に」
と、今は覚えておいてください。
「借方」「貸方」の言葉の意味については、そんなに気にしなくていいです。
また、このように、一連のお金の動き(「取引」と呼びます)に対し、
帳簿に適切な勘定科目を記入することを「仕訳」と言います。
もうひとつ、単純な仕訳の例を。
1月26日にCさんから、報酬1万円をもらったとします。
その場合の記入は下記のようになります。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/26 |
現金 |
¥10,000 |
売上 |
¥10,000 |
この場合は、現金をもらっているので、
借方に「現金」を、貸方に勘定科目である「売上」を書き、
同額の金額を記入します。
報酬が預金口座に振り込まれた場合は、
以下のようになります。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/26 |
普通預金 |
¥10,000 |
売上 |
¥10,000 |
同じ「報酬をもらう」という取引でも、
現金をもらうのと、振込みとで、
借方(左側)の、記入のしかたが異なることに注意しましょう。
さまざまな取引
現金の移動
現金を銀行へ預けたり、銀行から引き出したりした場合には、
仕訳が必要です。
引き出した場合
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/27 |
現金 |
¥10,000 |
普通預金 |
¥10,000 |
預けた場合
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/28 |
普通預金 |
¥10,000 |
現金 |
¥10,000 |
いずれも、増えたものを借方に、
減ったものを貸方に記入します。
現金の移動は、
増えたものを借方に、減ったものを貸方に
費用の発生
仕事で発生した費用に関しては、
費用に関する勘定科目を借方に、
減ったお金を貸方に記入します。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/29 |
消耗品費 |
¥5,000 |
現金 |
¥5,000 |
クレジットカードで購入した場合は、
購入日時点では未払金勘定で仕訳し、
カード決済日のときに未払金を普通預金等で処理します。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/30 |
消耗品費 |
¥5,000 |
未払金 |
¥5,000 |
3/8 |
未払金 |
¥5,000 |
普通預金 |
¥5,000 |
複式簿記では、仕訳時点では「相殺」ということを意識する必要はありません。
純粋に増えたもの減ったものを、借方貸方に忠実に記入します。
相殺は決算時点で集計するときに行いますので、心配要りません。
費用の発生は、
費用勘定科目を借方に、現金を貸方に
楽器の購入
30万円以上の高額な楽器を購入したときは、
減価償却資産の取得として処理します。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
2/1 |
工具器具備品 |
¥2,500,000 |
現金 |
¥2,500,000 |
一般の減価償却資産の勘定科目として「工具器具備品」が使わます。
楽器が主な資産であるミュージシャンは、
「楽器」という勘定科目を使ってもいいかと思います。
減価償却の仕訳は、
減価償却費を借方に、
楽器を借方に記入します。
この仕訳は決算時に行えばよいでしょう。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
12/31 |
減価償却費 |
¥450,000 |
工具器具備品 |
¥450,000 |
高額楽器の購入は、
購入時には、資産勘定科目を借方に、現金を貸方に
決算時には、減価償却費を借方に、資産勘定科目を貸方に
報酬をもらったとき
報酬は売上として考え、
現金等を借方に、
売上を貸方に記入します。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
2/2 |
現金 |
¥50,000 |
売上 |
¥50,000 |
報酬をもらったときは、
現金を借方に、売上を貸方に
プライベートでお金を使った場合
フリーランスで活躍するミュージシャンは、
仕事とプライベートのお金を完全に分けて管理することは余り無いと思います。
「仕事のギャラで近くの居酒屋に行って打ち上げ」
なんてことも良くあるかもしれません。
仕事のお金とプライベートのお金が、
同じ財布に入っていること自体は悪いことではありません。
ただ、プライベートで使った場合には、
「プライベートで使ってお金が減りました」ということを、
必ず帳簿に残す必要があるのです。
このとき使う勘定科目が「事業主貸」です。
たとえば、仕事で得たお金を使って、
自分の子供のランドセルを¥35,000で購入したとします。
この場合、次のような仕訳をします。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
2/3 |
事業主貸 |
¥35,000 |
現金 |
¥35,000 |
「事業主貸」とは、
「事業をやっている自分」から「プライベートの自分」にお金を貸し出す、
という意味合いと考えてください。
プライベートのために仕事のお金を使えば、
用途は何であれ、事業主貸勘定で処理します。
プライベートの支出は、事業主貸を借方に
源泉徴収された場合
源泉徴収されて報酬をもらう場合、
源泉徴収前の金額を売上と計算し、
源泉徴収分はプライベートの自分が税金を仮払いしたと考え、
事業主貸勘定で処理します。
たとえば、報酬1万円で、
1,000源泉徴収され、手取り9,000円の場合、
売上として10,000円を仕訳し、
1,000円は事業主貸で処理します。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
2/4 |
現金 |
¥10,000 |
売上 |
¥10,000 |
2/4 |
事業主貸 |
¥1,000 |
現金 |
¥1,000 |
源泉徴収分は、事業主貸で処理
プライベートのお金を仕事に使う場合
仕事の経費がプライベート口座から引き落とされた場合
個人のお金を仕事の経費として使用したことになります。
その場合「事業主借」勘定を使います
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
2/5 |
水道光熱費 |
¥3,500 |
事業主借 |
¥3,500 |
「事業主借」とは事業主貸とは逆に
「プライベートの自分」からお金を借りる、
という意味合いと考えてください。
プライベートのお金を仕事に使ったときは、
事業主借を貸方に
事業開始時
青色申告をする為の帳簿付けを始める場合、
「元入金」勘定を使います。
帳簿をつけ始める前に、
所持金や、楽器の未償却残高を調べて整理しましょう。
楽器の未償却残高というのは、
今まで経費として計算した減価償却費の累計額を、
購入金額から差し引いた額のことです。
たとえば、事業開始時に、
現金が¥110,000、
普通預金が¥2,500,000、
楽器の未償却残高が¥2,000,000、
があった場合、以下のように仕訳します。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/1 |
現金 |
¥110,000 |
元入金 |
¥4,610,000 |
|
普通預金 |
¥2,500,000 |
|
|
|
工具器具備品 |
¥2,000,000 |
|
|
事業開始時は、元入金を貸方に
そんなに気張らずに
「複式簿記」とか「仕訳」とか聞くと、
なにやら難しいものという印象を受けてしまいますが、
家計簿感覚でやってみると、
そんなに難しくなかったりします。
仕訳が難しいものは、
結構インターネット上に情報が転がっていたりします。
内容は保証しませんが、「教えてgoo」あたりは、
さまざまな事例での仕訳方法がQ&A形式で掲載されていたりします。
一度始めてみて、
疑問に思ったときに、勉強がてら調べてみる。
そうすると、意外に自然と身に付くもんですよ。
まずは元入金勘定から始めてみてはどうですか。
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