5. 決算
決算手続き
いよいよ、決算手続きに入ります。
決算手続きを行うことによって、
青色申告決算書に必要な、
損益計算書と貸借対照表の作成、
そして、帳簿を翌年度に繰り越すことができます。
損益計算書とは、一年間の収支を計算したもので、
どれだけ売上があって、どれだけお金を使って、結果どれだけ儲かったかという、
事業主の活動成績を表したものと言えます。
貸借対照表とは、決算時の資産と負債と元入金を整理した表のことで、
その時点での事業主の財務状況をあらわしたものと言えます。
決算手続きの一連の作業は、
簿記に慣れていないと難しい上に煩雑だと思います。
しかし、パソコン用の青色申告ソフトを導入すれば、
この作業を自動で行ってくれるため、大変便利です。
最後まで読まれて「難しいな」と感じられたときは、
導入をご検討されてはいかがでしょうか。
では、以下の通りに説明していきます。
- 合計残高試算表の作成
- 精算表の作成
- 損益振替
- 元入金振替
- 総勘定元帳への転記と帳簿の締切
- 繰越試算表の作成
合計残高試算表の作成
決算直前の仕訳が終わったら、
次に、決算の準備作業に入ります。
まずは、勘定科目ごとに金額を整理した試算表を作りましょう。
ここでは、合計額に加えて、借方貸方の差し引きである残高額を記入した、
合計残高試算表を作ることにします。
作業自体は、単純です。
まず、帳簿上の仕訳の金額を、勘定科目ごとに、
借方貸方それぞれ別々に合計し、
合計欄に記入します。
借方または貸方の一方しか金額が出てこない場合は、
残高の欄に、同金額を記入し、
借方貸方の両方に金額がある場合は、
差引額を残高の欄に記入します。
合計残高試算表 |
借方 |
|
勘定科目 |
|
貸方 |
残高
| 合計
|
|
合計
| 残高
|
¥23,500 |
¥6,245,750 |
現金 |
¥6,222,250 |
|
¥2,357,000 |
¥2,605,000 |
普通預金 |
¥248,000 |
|
¥2,050,000 |
¥2,500,000 |
工具器具備品 |
¥450,000 |
|
¥1,570,000 |
¥1,570,000 |
事業主貸 |
|
|
|
¥5,000 |
未払金 |
¥10,400 |
¥5,400 |
|
|
元入金 |
¥2,610,000 |
¥2,610,000 |
|
|
事業主借 |
¥745,000 |
¥745,000 |
|
|
売上 |
¥4,243,160 |
¥4,243,160 |
¥92,500 |
¥92,500 |
消耗品費 |
|
|
¥450,000 |
¥450,000 |
減価償却費 |
|
|
¥256,000 |
¥256,000 |
旅費交通費 |
|
|
¥24,560 |
¥24,560 |
水道光熱費 |
|
|
¥780,000 |
¥780,000 |
地代家賃 |
|
|
|
¥7,603,560 |
¥14,528,810 |
計 |
¥14,528,810 |
¥7,603,560 |
各勘定項目の合計額を足し合わせた総計は、借方と貸方で一致し、
各勘定項目の残高額を足し合わせた総計も、借方と貸方で一致します。
一致しなければ、仕訳時に違う金額を記入したか、
もしくは、試算表の計算をする際に計算間違いをしたかです。
もう一度よく確認してみましょう。
精算表の作成
作成した合計残高試算表をもとに、
損益計算書と貸借対照表を作成する準備をするための表として、
精算表を作成します。
順番に作成の方法を説明しますが、
下記の作成例を見るだけで、イメージは沸くと思います。
1. 各勘定科目ごとに、
の、合計6列の記入欄を設けます。
2. 前に作成した合計残高試算表から残高額の方を、
精算表の、残高試算表欄の借方と貸方に転記します。
3. 勘定科目のうち、資産科目について、
貸借対照表欄の借方に転記します。
資産科目とは、貸借対照表において資産として計算する勘定科目のことで、
現金、普通預金、定期預金、当座預金、
受取手形、売掛金、有価証券、前払金、
建物、工具器具備品、土地、
事業主貸などが挙げられます。
4. 勘定科目のうち、負債科目について、
貸借対照表欄の貸方に転記します。
負債科目とは、負債として計算する勘定科目のことで、
未払金、前受金、預り金、元入金、
事業主借などが挙げられます。
5. 勘定科目のうち、収益科目について、
損益計算書欄の貸方に転記します。
収益科目とは、収益として計算する勘定科目のことで、
売上、雑収入が挙げられます。
6. 勘定科目のうち、費用科目について、
貸借対照表の借方に転記します。
費用科目とは、経費として計算する勘定科目のことで、
消耗品費、旅費交通費、水道光熱費、修繕費
減価償却費、地代家賃などが挙げられます。
7. 精算表6列ごとの合計額をそれぞれ計算します。
8.精算書の勘定科目に、新たに損益勘定を設け、
損益計算書欄の借方合計額と貸方合計額の差額を、
損益計算書欄の借方と、貸借対照表欄の貸方に記入します。
(損失が出ている場合は、損益計算書欄の「貸方」と貸借対照表欄の「借方」に記入)
損益勘定を加えた貸借合計額は一致します。
精算表 |
勘定科目 |
|
残高試算表 |
|
損益計算書 |
|
貸借対照表 |
|
借方
| 貸方
| 借方
| 貸方
| 借方
| 貸方
|
現金 |
¥23,500 |
|
|
|
¥23,500 |
|
普通預金 |
¥2,357,000 |
|
|
|
¥2,357,000 |
|
工具器具備品 |
¥2,050,000 |
|
|
|
¥2,050,000 |
|
事業主貸 |
¥1,570,000 |
|
|
|
¥1,570,000 |
|
未払金 |
|
¥5,400 |
|
|
|
¥5,400 |
元入金 |
|
¥2,610,000 |
|
|
|
¥2,610,000 |
事業主借 |
|
¥745,000 |
|
|
|
¥745,000 |
売上 |
|
¥4,243,160 |
|
¥4,243,160 |
|
|
消耗品費 |
¥92,500 |
|
¥92,500 |
|
|
|
減価償却費 |
¥450,000 |
|
¥450,000 |
|
|
|
旅費交通費 |
¥256,000 |
|
¥256,000 |
|
|
|
水道光熱費 |
¥24,560 |
|
¥24,560 |
|
|
|
地代家賃 |
¥780,000 |
|
¥780,000 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
損益 |
|
|
¥2,640,100 |
|
|
¥2,640,100 |
|
計 |
¥7,603,560 |
¥7,603,560 |
¥4,243,160 |
¥4,243,160 |
¥6,000,500 |
¥6,000,500 |
以上で、精算表の作成は終了です。
作成した精算表の、
損益計算書欄を抜き出せば、そのまま損益計算書になり、
貸借対照表欄を抜き出せば、そのまま貸借対照表になります。
これを元に、青色申告決算書を作成することができます。
損益振替
売上などの収益科目や、
消耗品費などの費用科目は、
次年度に持ち越すことはありません。
したがって、これらの勘定科目をリセットするために、
一旦、損益勘定に振替えます。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
12/31 |
売上 |
¥4,243,160 |
損益 |
¥4,243,160 |
12/31 |
損益 |
¥92,500 |
消耗品費 |
¥92,500 |
12/31 |
損益 |
¥450,000 |
減価償却費 |
¥450,000 |
12/31 |
損益 |
¥256,000 |
旅費交通費 |
¥256,000 |
12/31 |
損益 |
¥24,560 |
水道光熱費 |
¥24,560 |
12/31 |
損益 |
¥780,000 |
地代家賃 |
¥780,000 |
元入金振替
さきほど計算した損益勘定、
そして、事業主貸、事業主借勘定は、
次年度の元入金として組み入れるため、
元入金勘定に振り替えます。
損益勘定を元入金に振替える額は、
精算表で計算した額と同じになります。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
12/31 |
損益 |
¥2,640,100 |
元入金 |
¥2,640,100 |
12/31 |
元入金 |
¥1,570,000 |
事業主貸 |
¥1,570,000 |
12/31 |
事業主借 |
¥745,000 |
元入金 |
¥745,000 |
収益科目と費用科目の損益勘定への振替である「損益振替」と、
損益、事業主貸、事業主借を元入金へ振替える「元入金振替」とをあわせて、
「決算振替」といいます。
総勘定元帳への転記と帳簿の締切
総勘定元帳とは、
勘定科目ごとに、仕訳を整理した帳簿のことで、
使用している勘定科目ごとに一冊存在するものです。
たとえば、下記の仕訳を総勘定元帳に転記する場合、
現金、元入金、普通預金、売上、消耗品費、工具器具備品の、
6冊の総勘定元帳が存在することになります。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/1 |
現金 |
¥110,000 |
元入金 |
¥2,610,000 |
|
普通預金 |
¥2,500,000 |
|
|
1/26 |
現金 |
¥10,000 |
売上 |
¥10,000 |
1/26 |
普通預金 |
¥10,000 |
売上 |
¥10,000 |
1/27 |
現金 |
¥10,000 |
普通預金 |
¥10,000 |
1/28 |
普通預金 |
¥10,000 |
現金 |
¥10,000 |
1/29 |
消耗品費 |
¥5,000 |
現金 |
¥5,000 |
1/30 |
工具器具備品 |
¥2,500,000 |
普通預金 |
¥2,500,000 |
例として、現金勘定に関する総勘定元帳を下記に示します。
仕訳帳の借方に現金勘定があった場合は、総勘定元帳に金額と貸方勘定科目を、
仕訳帳の貸方に現金勘定があった場合は、総勘定元帳に金額と借方勘定科目を、
転記していきます。
総勘定元帳 |
現金 |
日付 |
|
借方 |
|
日付 |
|
貸方 |
1/1 |
元入金 |
¥110,000 |
1/28 |
普通預金 |
¥2,610,000 |
1/26 |
売上 |
¥10,000 |
1/29 |
消耗品費 |
¥5,000 |
1/27 |
普通預金 |
¥10,000 |
|
|
|
これは、取引が少ない場合は決算時にまとめて行うことができますが、
取引が多くなればなるほど非常に煩雑な作業になります。
したがって、総勘定元帳への転記は、
一週間に一度、または一ヶ月に一度行うのが良いかと思います。
決算振替が終われば、
無事、決算終了ですので、
帳簿を締め切ることができます。
繰越試算表の作成
あわせて、来期への資産科目、負債科目、元入金勘定の繰越を整理するため、
繰越試算表を作成しておきましょう。
繰越試算表は、精算表内の貸借対照表から、
「元入金振替」を加味しただけのものです。
つまり、
来期の元入金 = 今期の元入金 + 事業主借 - 事業主貸 + 損益
(損失の場合: 来期の元入金 = 今期の元入金 + 事業主借 - 事業主貸 - 損益)
となります。
勘定科目 |
|
繰越試算表 |
|
借方
| 貸方
|
現金 |
¥23,500 |
|
普通預金 |
¥2,357,000 |
|
工具器具備品 |
¥2,050,000 |
|
未払金 |
|
¥5,400 |
元入金 |
|
¥4,425,100 |
|
計 |
¥4,430,500 |
¥4,430,500 |
来期の仕訳帳に繰越分の仕訳をしておきましょう。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/1 |
現金 |
¥23,500 |
未払金 |
¥5,400 |
|
普通預金 |
¥2,357,000 |
元入金 |
¥4,425,100 |
|
工具器具備品 |
¥2,050,000 |
|
|
総勘定元帳にも、繰越仕訳分を転記しておきましょう。
現金 |
日付 |
|
借方 |
|
日付 |
|
貸方 |
1/1 |
(前期より繰越) |
¥23,500 |
|
|
|
確定申告編
青色申告編
メニュー
リンク
著作権
- copyright © 2000 Powered By rjaba allrights reserved
広告