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3. 収支内訳書の書き方

帳簿の整理

それでは、収支内訳書を実際書いてみましょう・・・、
と行きたいところですが、
それはもう少し後にして、
まず、ざっと帳簿の整理をしましょう。
帳簿の整理といっても、
べつに、難しいことをするわけではありません。
一年(1月1日から12月31日)の間に記入した項目を合計して、表にまとめるだけです。
合計額は、「収入」「源泉徴収額」「経費」の3種類について、
それぞれまとめると良いでしょう。

収入と源泉徴収額の集計

「収入」と「源泉徴収額」は、トータルの金額と、
取引先(報酬をくれた人や会社)ごとの合計を計算します。
たとえば、
  • 「A商店からのギャラは、合計35万円だったな」
  • 「B音楽教室からの報酬は、月々6万円だから、年間72万円か」
  • 「C氏から、2000円のギャラを合計5回もらったから、年間1万円だな。」
  • 「3月1日と12月22日に、D幼稚園でひな祭りライブとクリスマスライブをやったので、
    ギャラは、2万円、3万円で合計5万円だな」
というように、
大学ノートに書いた記録から、すべての収入を取引先別に洗い出して、
それぞれの合計金額を計算します。
大学ノートを書く際に、月末の締めを設けていれば、
合計の計算は、1月から12月の12コの足し算でいいはずですし、
取引が少なければ(寂しいですが)年度分を一気に計算することも可能でしょう。
源泉徴収額についても、同様ですが、
取引先からもらえる源泉徴収表に、
年間の徴収金額が記されている場合がほとんどかと思います。
もし、報酬を給与としてもらっている場合は、
この収支内訳書には関係ないですので、
集計に含めないようにしましょう。
報酬が、事業収入か、給与収入かが分からない場合は、
取引先に確認しておきましょう。

経費

経費に関しては、
勘定科目ごとに整理します。
収入と同じ要領で、
「消耗費」だけ、とか、「旅費交通費」だけの合計額を、
それぞれ計算してください。
これも、月末に締めを設けていれば、
それぞれの勘定科目で、12コの足し算で済むはずです。

合計試算表

それぞれ合計金額が計算できれば、
自動的に、次のような表が出来上がるはずです。
下の表に例を示します。
合計試算表
収入 A商店
¥350,000

B音楽教室 ¥720,000

C氏 ¥10,000

D幼稚園 ¥50,000
収入合計
¥1,130,000

源泉徴収額 A商店 ¥35,000

B音楽教室 ¥72,000
源泉徴収額合計
¥107,000

経費 旅費交通費 ¥84,260

消耗品費 ¥196,346

修繕費 ¥75,600

減価償却費 ¥65,000
経費合計
¥421,206

このような、勘定科目ごとに収支合計を計算したものを、
「合計試算表」と言います。
実は、この合計試算表を作成すれば、
確定申告は、8割方終わったようなものなのです。

収支内訳書の記入

事業所得を申告する場合は、
収入と支出をまとめた収支内訳書を提出することになっていますから、
それをまず記入していましょう。
枠がたくさんありますが、
基本的には、先で作成した合計試算表を転記するだけになります。
写真のAの部分は、申告者である自分自身の情報を記入する欄です。
住所、氏名などを記入しましょう。
Bの部分が、収入と経費を記入する欄です。
詳細に説明します。

収入合計額を記入

収入金額の中では、
物品を売買しないミュージシャンに関連するものは、
「(1)売上(収入)金額」だけだと思います。
ここに、試算表で計算した収入合計額を記入しましょう。
物品を売買しないミュージシャンは、
仕入れなどが無いために、原価の概念もありません。
従って、売上原価の欄は記入する必要がありません。
「(10)差引金額」は(1)売上(収入)金額と同じになると思います。
「(1)売上(収入)金額」に収入合計額を記入
「(10)差引金額」に(1)と同額を記入

経費を勘定科目ごとに記入

(11)から(16)および(イ)から(レ)に、
試算表で計算した勘定科目ごとの合計を記入します。
たとえば、旅費交通費の合計が¥84,260であれば、
「(ニ)旅費交通費」の欄に"84,260"と記入します。
(イ)から(レ)の「その他の経費」に関しては、
小計として、(17)に(イ)から(レ)の合計額を記入します。
そして、(11)から(16)、(17)の合計額を(18)に記入し、
それを経費合計額とします。
(18)の金額は、試算表の経費合計額と合っていますか?
合っていなければ、収支内訳書か試算表の少なくとも一方の計算を間違えています。
もう一度計算しなおしてみましょう。
(11)から(16)、(イ)から(レ)に、
勘定科目ごとに経費を記入する。
(19)に、(10)から(18)を引いた金額、
すなわち、収入から経費を引いた金額を記入し、
(21)に(19)と同額を記入します。
従業員や、税理士を雇っていなければ、
Cの部分は記入する必要がありません

2枚目の記入

次に収支内訳書の2枚目の記入をします。

売上(収入)金額の明細

1枚目の「(1)売上(収入)金額」の、
取引先別に記入するのが、2枚目のDの部分です。
取引先で、報酬額の多い順で上位4つにつき、
「売上先名」「所在地」「収入(売上)金額」を、
それぞれ記入します。
取引先が5つ以上ある場合は、
上位4つ以外をその他として、
その合計額を記入します。
収入金額を取引先ごとに記入

減価償却費の計算

高額な楽器は、5年間で少しずつ経費に計上します。
このことを減価償却と言います
今年、どれくらい減価償却を行う楽器があるのかを、
収支内訳書の2枚目に記入しておかなくてはいけません。
ノートに書いてある減価償却管理の表を参考にしながら記入していきましょう。
例として、
2007年4月15日にピアノを250万円で購入したとし、
記入の方法を、左の欄から説明します。
「減価償却資産の名称等」には、
楽器の名前を書けばよいので、
"ピアノ"と記入します。
「面積又は数量」には、
購入した楽器の台数を記入します。
この場合は1台として、"1"を記入します。
「取得年月」には、取得した年月を記入するので、
"04年3月"と記入します。
「(イ)取得価格」は250万円ですので、
"2,500,000円"と記入します
「(ロ)償却の基礎となる金額」とは、
通常は取得価格と同額となります。
したがって、"2,500,000円"と記入します。
ただし、2007年の3月以前に購入したものについては、
償却の基礎となる金額は「取得価格の90%」と決められています。
仮にこのピアノを2007年の3月に購入したならば、
¥2,500,000 × 90% = ¥2,250,000ですので、
"2,250,000円"と記入することになります。
「償却方法」は、白色申告の場合は、
定額法で計算することになっていますので、
"定額"と記入しましょう。
「耐用年数」は楽器の場合は"5年"です。
「(ハ)償却率」については、
耐用年数5年の場合は、一年で5分の1ずつ償却しますので、
"0.2"と記入します。
「(ニ)本年中の償却期間」は、
申告対象年である2007年の4月に購入したので、
4月から12月の9ヶ月分を償却して良いことになり、
"9"を記入します。
(注:来年以降、この楽器に関しては"12"を記入します)
「(ホ)本年分の普通償却費」は、
「(ロ)償却の基礎となる金額」 × 「(ハ)償却率」 × 「(ニ)本年中の償却期間」
で計算しますので、この場合、
¥2,500,000 × 0.2 × 9/12 = ¥375,000
となり、"375,000円"と記入します。
「(ヘ)特別償却費」は、
楽器に特別償却が認められていませんので、
"0円"を記入します。
「(ト)本年分の償却費合計」は、
「(ホ)本年分の普通償却費」と同額の、
"375,000円"と記入します。
「(チ)事業専用割合」は、
家庭按分する場合に計算する必要がありますが、
楽器は仕事でしか使わないとし、
ここでは、"100%"を記入します。
「(リ)本年分の必要経費算入額」は、
「(ト)本年分の償却費合計」 × 「(チ)事業専用割合」
で計算しますので、
事業専用割合がもし100%なら、
「(ト)本年分の償却費合計」と同額なはずです。
"375,000円"と記入します。
「(ヌ)未償却残高」は、
来年以降に、経費として計算するべき金額ですので、
「(イ)取得金額」 - 「今年までに経費とした金額」
と計算します。
この場合は、今年分の経費算入額を引けばよいので、
¥2,500,000 - ¥375,000 = ¥2,125,000となり、
"2,125,000円"と記入します。
「摘要」は"楽器"や"ピアノ"とでもしておけばよいでしょう
すこし長くなりましたが、
減価償却費の計算に書くべき事項を下の表にまとめます。
事例は2004年3月に仕事用のピアノを250万円で購入した場合です。
記入欄 内容 (事例)ピアノ購入
減価償却資産の名称等 資産の正式名称 備品
面積又は数量 購入した台数 1
取得年月 購入した年月 04年3月
(イ)取得価格 購入価格 2,500,000円
(ロ)償却の基礎となる金額 取得価格と同額 2,500,000円
償却方法 償却金額の算出法 定額
耐用年数 償却する年数 5年
(ハ)償却率 一年で償却する割合 0.2
(ニ)本年中の償却期間 本年中に購入した場合の償却期間 9ヶ月
(ホ)本年分の普通償却費 本年分の普通償却の金額 375,000円
(ヘ)特別償却費 本年分の特別償却の金額 0円
(ト)本年分の償却費合計 普通償却と特別償却の合計額 375,000円
(チ)事業専用割合 仕事で用いている割合 100%
(リ)本年分の必要経費算入額 本年分の必要経費として認められる額 375,000円
(ヌ)未償却残高 資産の未償却分 2,125,000円
摘要 楽器名など資産の説明 楽器(ピアノ)

地代家賃の内訳

賃貸住宅を仕事場に使っている場合は、
内訳書の「地代家賃の内訳」に記入します。
礼金(権利金)を払っている場合は「権更」の「権」を丸を囲んでその金額を、
更新料の場合は「権更」の更を丸で囲んでその金額を、
家賃は年間の総額を「賃」の欄に、それぞれ金額を書きます。
その合計額で、仕事割合の分を必要経費算入額に記入します。
「仕入金額の明細」「利子割引料の内訳」については、
フリーランスのミュージシャンが記入する事項はないと思います。
これで、収支内訳書はすべて埋まったことになります。
次に、いよいよ申告書Bを作成します。

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