6.青色申告決算書の作成
申告書類の作成
青色申告の場合、
確定申告時に青色申告決算書と申告書Bを提出することになります。
ここではまず、青色申告決算書を作成します。
青色申告ソフトを使っている方は、
この辺も仕訳帳から自動的に作成してくれますので、
軽く流し読みして頂くだけで十分です。
青色申告決算書
青色申告決算書を書いてみましょう。
青色申告決算書は、以下の4枚で構成されています。
- 損益計算書
- 月別売上金額などの計算書
- 減価償却費などの計算書
- 貸借対照表
決算書を作るにあたって、
決算時に作成した精算表を準備しておきましょう。
1枚目の損益計算書と、4枚目の貸借対照表は、
この精算表をまる写しすることになりますので。
ここでは、下記の精算表を元に説明していきます。
精算表 |
勘定科目 |
|
残高試算表 |
|
損益計算書 |
|
貸借対照表 |
|
借方
| 貸方
| 借方
| 貸方
| 借方
| 貸方
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現金 |
¥23,500 |
|
|
|
¥23,500 |
|
普通預金 |
¥2,357,000 |
|
|
|
¥2,357,000 |
|
工具器具備品 |
¥2,050,000 |
|
|
|
¥2,050,000 |
|
事業主貸 |
¥1,570,000 |
|
|
|
¥1,570,000 |
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未払金 |
|
¥5,400 |
|
|
|
¥5,400 |
元入金 |
|
¥2,610,000 |
|
|
|
¥2,610,000 |
事業主借 |
|
¥745,000 |
|
|
|
¥745,000 |
売上 |
|
¥4,243,160 |
|
¥4,243,160 |
|
|
消耗品費 |
¥92,500 |
|
¥92,500 |
|
|
|
減価償却費 |
¥450,000 |
|
¥450,000 |
|
|
|
旅費交通費 |
¥256,000 |
|
¥256,000 |
|
|
|
水道光熱費 |
¥24,560 |
|
¥24,560 |
|
|
|
地代家賃 |
¥780,000 |
|
¥780,000 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
損益 |
|
|
¥2,640,100 |
|
|
¥2,640,100 |
|
計 |
¥7,603,560 |
¥7,603,560 |
¥4,243,160 |
¥4,243,160 |
¥6,000,500 |
¥6,000,500 |
それでは、一枚ずつ作っていきましょう。
1枚目 : 損益計算書
損益計算書は、一年間の収益と費用の合計額から、
その年の儲けを計算した、いわば事業成績を表すものです。
記入の流れは、白色申告の収支内訳書とほとんど同じです。
大きくA、Bに分かれていますので、
順に説明します。
Aには、自分の名前や住所を書きます。
忘れず記入しましょう。
Bには、収益科目や費用科目の一年間の合計額を記入します。
合計額は、すでに決算時に計算した精算表の「損益計算書」の欄にまとめてあると思うので、
それを記入します。
(1)売上(収入)金額には、
売上科目の合計額"4,243,160"を記入します。
(2)から(6)の売上原価の欄は、
物品を売買しないミュージシャンは記入する必要はありません。
(7)差引金額には、(1)と同額"4,243,160"を記入します。
(8)から(31)には、費用科目の合計額を、各勘定科目ごとに記入します。
今回発生している費用科目は、
消耗品費、減価償却費、旅費交通費、水道光熱費、地代家賃ですので、
(10)水道光熱費 : 24,560
(11)旅費交通費 : 256,000
(17)消耗品費 : 92,500
(18)減価償却費 : 450,000
(23)地代家賃 : 780,000
と記入します。
ここに記載されていない勘定科目を設定している場合は、
(25)以降に手書きで勘定科目とその金額を記入しましょう。
(32)計の欄に、費用科目の総合計金額を記入します。
24,560 + 256,000 + 92,500 + 450,000 + 780,000 = 1,603,060
ですので、"1,603,060"を記入します。
(33)に、(7)の売上科目の合計額と(32)費用科目の合計額との差引額を記入します。
4,243,160 - 1,603,060 = 2,640,100
ですので、"2,640,100"を記入します。
精算表上での「損益」と同じ額かどうか確認しましょう。
(34)から(42)は、
手形取引をしている場合や、社員を雇っている場合に記入します。
すべて空欄で良いでしょう。
(43)には、(33)と同額の"2,640,100"を記入します。
(44)には青色申告特別控除額、(45)には青色申告特別控除後の所得金額をそれぞれ記入します。
(43)が65万円以下の場合、
(44)は(43)と同額を記入し、(45)には"0"を記入します。
(43)が65万円を超えた場合は、
(44)には"650,000"を記入し、(45)には(43)から65万を引いた額を記入します。
下にまとめます。
(43)青色申告控除前の所得金額
| 65万円以下の場合 |
65万円を超える場合 |
(44)青色申告特別控除額
| (43)と同額 |
650,000 |
(45)所得金額
| 0 |
(43) - 650,000 |
ここでは、(43)が2,640,100と65万を超えているので、
上表の右列の場合に当たります。
よって、(44)には"650,000"を記入します。
次に、(43) - 650,000を計算すると、
2,640,100 - 650,000 = 1,990,100
ですので、(45)には"1,990,100"を記入します。
以上で、損益計算書の記入は終了です。
所得税額は、最後に記入した所得金額をもとに計算されます。
2枚目 : 月別売上金額などの計算書
決算書の2枚目では、CとGの2箇所に記入を行います。
D、E、Fは空欄で構いません。
Cでは、売上金額を月別に記入します。
Gでは、青色申告控除額をもう一度記入します。
Cの、月別売上(収入)金額及び仕入金額では、
月別の売上高を記入し、合計額を計算します。
欄の左列が、売上高を月別に記入する欄です。
1月から12月まで、それぞれの月別売上高を記入しましょう。
家事消費の欄は空欄です。
雑収入がある場合は、年間の合計額を雑収入の欄に記入しましょう。
そして、1月から12月までの売上高と雑収入の総合計額を計の欄に記入します。
この金額は、損益計算書の(1)売上(収入)金額と一致します。
右列は、仕入金額を月別に記入する欄ですので、
空欄で構いません。
以上で、Cの部分の記入は終わりです。
Gでは、青色申告控除額の計算をします。
順に見ていきましょう。
(6)では、不動産所得の年間合計額を記入します。
無ければ、"0"を記入します。
(7)では、損益計算書で計算した(43)の金額を転記します。
(8)は、不動産所得が無ければ"0"です。
(9)は、損益計算書(44)の青色申告控除額を記入します。
65万以下ならその金額、65万超なら"650,000"を記入します。
以上で、Gの部分の記入は終了です。
3枚目 : 減価償却費などの計算書
3枚目は、減価償却費や地代家賃などを計算するための書類です。
Hの部分が減価償却費の計算、Jの部分が地代家賃の計算を行うところです。
Hの減価償却費の計算に関しては、
固定資産台帳という管理表を作成しておけば分かりやすいですが、
なかなか面倒で、作成していないことが多いでしょう。
そんな方も、絶対管理しておかなければいけない項目は、
資産名、購入年月日、購入額の3つです。
逆に言うと、この3項目さえ管理しておけば、
減価償却費の計算はできます。
最低限、以下のような形で、
高額な楽器は固定資産として管理しましょう。
資産No. |
資産名 |
購入年月日 |
購入額 |
001 |
エレクトーン |
2002.3.15 |
¥1,800,000 |
002 |
スピーカー一式 |
2003.12.24 |
¥450,000 |
ここでは例として、
2005年の3月15日にピアノを250万円で購入した場合の記入の方法を、
左の欄から説明します。
「減価償却資産の名称等」には、
固定資産の勘定科目をを書きます。
"工具器具備品"と記入します。
「面積又は数量」には、
購入した楽器の台数を記入します。
この場合は1台として、"1"を記入します。
「取得年月」には、取得した年月を記入するので、
"05年3月"と記入します。
「(イ)取得価格」は250万円ですので、
"2,500,000円"と記入します
「(ロ)償却の基礎となる金額」とは、
残存価格を差し引いた額のことを指し、
これは、取得価格の90%と決められています。
この場合は、¥2,500,000 × 90% = ¥2,250,000ですので、
"2,250,000円"と記入します。
「償却方法」は、通常定額法で計算することになっていますので、
"定額"と記入しましょう。
「耐用年数」は楽器の場合は"5年"です。
「(ハ)償却率」については、
耐用年数5年の場合は、一年で5分の1ずつ償却しますので、
"0.2"と記入します。
「(ニ)本年中の償却期間」は、
申告対象年である2004年の3月に購入したので、
3月から12月の10ヶ月分を償却して良いことになり、
"10"を記入します。
(注:来年以降、この楽器に関しては"12"を記入します)
「(ホ)本年分の普通償却費」は、
「(ロ)償却の基礎となる金額」 × 「(ハ)償却率」 × 「(ニ)本年中の償却期間」
で計算しますので、この場合、
¥2,250,000 × 0.2 × 10/12 = ¥375,000
となり、"375,000円"と記入します。
「(ヘ)特別償却費」は、
楽器に特別償却が認められていませんので、
"0円"を記入します。
「(ト)本年分の償却費合計」は、
「(ホ)本年分の普通償却費」と同額の、
"375,000円"と記入します。
「(チ)事業専用割合」は、
家庭按分する場合に計算する必要がありますが、
楽器は仕事でしか使わないとし、
ここでは、"100%"を記入します。
「(リ)本年分の必要経費算入額」は、
「(ト)本年分の償却費合計」 × 「(チ)事業専用割合」
で計算しますので、
事業専用割合がもし100%なら、
「(ト)本年分の償却費合計」と同額となりますので、
"375,000円"と記入します。
「(ヌ)未償却残高」は、
来年以降に、経費として計算するべき金額ですので、
「(イ)取得金額」 - 「今年までに経費とした金額」
と計算します。
この場合は、今年分の経費算入額を引けばよいので、
¥2,500,000 - ¥375,000 = ¥2,125,000となり、
"2,125,000円"と記入します。
「摘要」は"ピアノ"とでもしておけばよいでしょう。
すこし長くなりましたが、
減価償却費の計算に書くべき事項を下の表にまとめます。
事例は2005年3月に仕事用のピアノを250万円で購入した場合です。
記入欄 |
内容 |
(事例)ピアノ購入 |
減価償却資産の名称等 |
固定資産の勘定科目 |
工具器具備品 |
面積又は数量 |
購入した台数 |
1 |
取得年月 |
購入した年月 |
05年3月 |
(イ)取得価格 |
購入価格 |
2,500,000円 |
(ロ)償却の基礎となる金額 |
購入価格 × 90% |
2,250,000円 |
償却方法 |
償却金額の算出法 |
定額 |
耐用年数 |
償却する年数 |
5年 |
(ハ)償却率 |
一年で償却する割合 |
0.2 |
(ニ)本年中の償却期間 |
本年中に購入した場合の償却期間 |
10ヶ月 |
(ホ)本年分の普通償却費 |
本年分の普通償却の金額 |
375,000円 |
(ヘ)特別償却費 |
本年分の特別償却の金額 |
0円 |
(ト)本年分の償却費合計 |
普通償却と特別償却の合計額 |
375,000円 |
(チ)事業専用割合 |
仕事で用いている割合 |
100% |
(リ)本年分の必要経費算入額 |
本年分の必要経費として認められる額 |
375,000円 |
(ヌ)未償却残高 |
資産の未償却分 |
2,125,000円 |
摘要 |
その資産の説明 |
ピアノ |
地代家賃の内訳
地代家賃を計上した場合、
物件の情報と、家賃等の金額をJの部分に記入します。
礼金(権利金)を払っている場合は「権更」の「権」を丸を囲んでその金額を、
更新料の場合は「権更」の更を丸で囲んでその金額を記入します。
月々の家賃の年間合計額は「賃」の欄に記入します。
その合計額で、仕事割合の分を必要経費算入額に記入します。
この金額は、一枚目の損益計算書(23)地代家賃の額と一致します。
以上で3枚目の記入は終了です。
4枚目 : 貸借対照表
貸借対照表は、決算時点での資産と負債の額を記入した、
いわば、健康診断表のようなものです。
Mの部分が貸借対照表の記入欄になります。
Nは記入する必要がありません。
貸借対照表は、
左側が、資産科目および事業主貸勘定を記入する欄で、
右側が、負債科目および事業主借勘定や元入金勘定、所得金額を記入する欄です。
期首と期末とに分かれていますので、
どちらも記入することにします。
期首の貸借対照表については、
今年事業開始した場合、事業開始時の元入金の仕訳をそのまま記入します。
日付 |
|
借方 |
|
貸方 |
1/1 |
現金 |
¥110,000 |
元入金 |
¥2,610,000 |
|
普通預金 |
¥2,500,000 |
|
|
上のような仕訳を事業開始時にしていた場合は、
資産の部の期首の列に、
現金 : 110,000
その他の預金 : 2,500,000
合計 : 2,610,000
を記入します。
負債の部の期首の列にある、
元入金 : 2,610,000
合計 : 2,610,000
を記入します。
前年度も青色申告を行っていた場合は、
前年度の繰越試算表、または今期首の繰越仕訳を転記します。
期末の貸借対照表は、
決算時に作成した精算表の「貸借対照表」欄の金額を転記します。
例では、資産の部の期末の列に、
現金: 23,500
普通預金 : 2,357,000
工具器具備品 : 2,050,000
事業主貸 : 1,570,000
合計 : 6,000,500
を記入します。
負債の部の期末の列には、
未払金 : 5,400
事業主借 : 745,000
元入金 : 2,610,000
青色申告控除前の所得金額 : 2,640,100
合計 : 6,000,500
を記入します。
以下に、貸借対照表の出来上がりイメージを載せます。
貸借対照表 |
資産の部 (円) |
|
負債の部 (円) |
勘定科目 |
|
1月1日 (期首)
| 12月31日 (期末)
| 勘定科目 |
|
1月1日 (期首)
| 12月31日 (期末)
|
現金 |
110,000 |
23,500 |
未払金 |
|
5,400 |
その他の預金 |
2,500,000 |
2,357,000 |
|
|
工具器具備品 |
|
2,050,000 |
|
|
|
|
|
|
|
事業主貸 |
|
1,570,000 |
事業主借 |
|
745,000 |
|
|
|
元入金 |
2,610,000 |
2,610,000 |
|
|
|
控除前所得金額 |
|
2,640,100 |
|
計 |
2,610,000 |
6,000,500 |
計 |
2,610,000 |
6,000,500 |
貸借対照表を見ると、
だいたいのお金の使い方が分かります。
この例だと、
「儲けが260万円で、現金と普通預金の残高はさほど変化なし。
儲けたお金はどこに消えたかというと、ほとんどは楽器の購入代に充てられていて、
一部は家計に流れている」
ということが分かります。
貸借対照表の作成は、青色申告をするためだけと捉えるのではなく、
健全な事業活動のためのバロメータとして役立てていけば、
今後の活動における、指針の一つとなるのではないでしょうか。
おつかれさまでした
以上で、計4枚から成る青色申告決算書が作成できました。
もう一度、作成した4枚を見直してみましょう。
決算書は緑色の罫線で印刷されていますね。
「もしや、この緑色のことを"青"と呼んでいるのか・・・」
と、日本人の悲しい性を嘆き悲しんでいるのでしょうか。
毎年、涙で滲んだ決算書を提出する人が後を絶たないそうです。
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